はじめに
ボードゲームカフェに足を運んだことがあるだろうか。端的に言えば「ボードゲームで遊べるカフェ」のことである。2010年代に入って以降、急速に増えた業種らしい。現在は全国各所に633店舗(ボドゲーマ登録店舗数、2026/8/10現在)ものボードゲームカフェが営業しているという。
現在、私はとあるボードゲームカフェのスタッフとして働いている。まだ雇われの身だが、将来は自分でお店を開き、切り盛りしたいと考えている。この記事では、そんな私のボードゲーム遍歴を個人史という形で執筆していく。自分語りってやつである。興味がない人には大変聞き苦しいことかもしれないが、少しでも楽しんでいただけると幸いだ。
ボードゲームとの出会い 中学~大学(一回目)
私がボードゲームと関わりを持ったのは、遡れば幼少期に父に教わったチェスということになるが、もっと大人数向けの物で言えばそれこそ『人狼』が最初ということになるだろうか。2010年代の『人狼』ブームの頃、私は中学二年生であった。休み時間に幾度となく『人狼』を遊び、高校・大学進学で離れ離れになった後でも「久々に集まるか」とボードゲームカフェで遊んだ。そこで触れたのが『カタン』である。
正直、『カタン』との出会いをよく覚えていない。動画で見たわけでもないし、誰かからのクチコミだったような気がしなくもない。初めて遊んでからすぐに、自分でもスタンダード版を購入した。今にして思えば「初心者に『カタン』は難しくないか……?」とも感じるのだが、何故か『カタン』は初心者にもおすすめのスタンダードなボードゲームであるということになっている。そう言えるくらい面白いのは事実なのだが。
あとは、小箱のゲームにたくさん触れた。『はぁって言うゲーム』『オジサンメッセージ』『たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。』などなど、いかにも大学生が触りそうなゲーム達である。『人狼』もそうだが、そういった比較的軽めでポップなゲームがボードゲームに触れる入口になってくれているので大変ありがたいと思う。そのうえで、どうやって中量級の、とっつきにくそうに見える(が大変面白い!)ボードゲームに触れてもらえるかがボドゲカフェ店員の悩むべきところであるのだがそれはさておき。
ボードゲームとの別れ
『カタン』以降、ボードゲームとの関わりは「薄く長く」続くことになった。なぜ「薄く」ならざるを得なかったのかと言えば、そう、コロナ禍である。2020年~22年くらいまでは、人と面と向かって会うことが難しい世の中だったと記憶している。ボードゲームなど尚更である。緊急事態宣言中に「みんなで集まってボードゲームで遊ぼう」なんて言えば、四方八方から石を投げられたのではないか。全く酷い世の中だった。その酷い世の中の延長に、私たちは生きているのだが。
さらに、コロナ禍で私は気持ちを病んでしまい、当時通っていた大学を退学している。私の世代は高校三年生の頃にコロナが到来、大学一年生をリモート授業で過ごし、二年生になりいざ大学へ通ってみるとどこで作ったのか知らないが周りにはすでにコミュニティができていた……なんていう世代である。みんなどこで出会い仲良くなっていたんだ。通っていた大学には寮があったので、きっとそこでの共同生活か何かで仲良くなっていたのだろうが(私は自宅通学だった)……。
そこからは一年半にわたるニート生活である。いやー、きつかった! 周りに置いて行かれる感覚。何をしようにも上手くいかない気さえした。バイトは続かず転々とし、作ってしまったクレジットカードの返済額だけが貯まっていった。最後にはタイミーだけで返済額を減らしていくことになった。地獄である。よく抜け出せたな、と今では思う。
ボードゲームとの再会
抜け出せたきっかけは——少々ズルいやり方なのだが——新しく大学に通い始めたことである。幸福なことに、両親は入学金と一年目の学費を捻出してくれた。二年目以降は奨学金でやり繰りしているので、その借金をいずれ背負う日々にはなるのだが、ニートよりは良い(ニートという現象は、「社会にとって悪」などではなく、そのひと本人のためにならないので良くない)。
大学に合格してからの半年間は、学業との兼ね合いもあるので「もう定職に就かないとマズい」と考え、タイミーでお世話になっていたスーパーでバイトをすることにした。適職だったようで楽しめた。そうこうしているうちに大学に入学、少しばかり問題を起こし、発達障害と診断され……なんてことになるのだが、それはまた別の機会に。
大学二年に上がり同じコースになったK君は筋金入りのボードゲーム好きで、『ニムト』『ゲシェンク』『ごきぶりポーカー』などの軽ゲーを学校に持ち込み、私にボードゲームの面白さを思い出させてくれた。当時、スーパーのバイトが店長の交代などで上手くいかなくなっていた私は、K君のはたらきかけもあって、「ボードゲームカフェで働くのも良いかもな」と思い始めた。そのことをK君に相談すると、「ボドゲカフェで働くなら今の君の知識量じゃマズい」と『ドミニオン』や『ヘルパゴス』、『スカル』なんかを教えてくれた。そして今年の5月には、一緒にゲームマーケットへと足を運んだ。
大変楽しかったし、恩義を感じてもいる。足を向けては寝られない。だがK君はのちに、付き合っていた彼女を裏切り、同じコースの女性とくっつき浮気する……という所業をやってのけた。私がとやかく言うことではないし首を突っ込むことではないのだが、自責の念に駆られているのか、はたまた浮気相手との駆け落ちというシチュエーションに酔っているのか知らないが、K君は以前のようにコースの仲間たちに働きかけることをしなくなってしまった。めっきり、である。今思い返してみると大変寂しい。だが浮気の顛末は非常に痛ましい、義憤に駆られてすらしまうような内容であった。複雑な気分である。
ボードゲームカフェで働き始めて
ボードゲームカフェはと言うと、面接に行ってみたら即合格。非常にありがたいことに現在まで一年近く働かせてもらっている。そこで覚えたボードゲームは数知れない。ざっと数えても100はありそうな気がする。とは言え、『テラフォーミングマーズ』や『チャレンジャーズ』、『アンドールの伝説』や『セブンワンダーズ』などの重ゲーを全くさらえていない。まだまだ先は長いのである。
お客さんにゲームを紹介して、その面白さを知ってもらえるのが楽しい。「面白い」と言ってもらえると自分の事のように嬉しくなる。好きなものを広めていくことが好きだ。まだまだ頑張れる気がする。